新型コロナ感染拡大防止のために、成人式が中止となった自治体があると聞いて、心を痛めています。
人生の区切りである晴れの式典に参加できないことはもちろんですが、用意していた晴れ着を着ることができないことも、気の毒に感じています。
それも、直前での決定ですので、ショックも大きいのではないかと想像しています。
中止した自治体は、いつか日を改めて、式典を行って欲しいものです。
振袖は未婚女性の第一礼装ですから、今回、成人式で着ることができなくても、他にも着用の機会があります。
ですから、あまり気を落とさず、チャンスがあれば、ぜひ着ていただきたいと思います。
最近の成人式は、レンタルの振袖が主流になっています。
中には、着付けやヘアメイク、写真撮影までセットになったプランもあるそうです。
一か所で、終えることができれば、こんなに便利なことはありません。
しかし、もし、お母さまやおばあさまが振袖をお持ちなのであれば、それを活用していただきたいと思います。
お母さまやおばあさまが購入された時期だと、作られたのは昭和の後期か、平成の初め頃だと思います。
その頃は、まだ呉服小売業界も活気がある時代でした。
今よりも、呉服屋さんも職人さんも多く、良いものが作られていた時期です。
また、消費者も着物に詳しい方が多く、下手な物は作れませんでした。
特に、バブル期前後には、贅を尽くした着物が作られていました。
シルクの質が高いのはもちろんですが、総絞り、辻が花、加賀友禅、京友禅など、豪華な振袖が作られた時代です。
軽自動車か、それ以上の値段が付いていました。
そのような着物は、20年~30年経っても色褪せず、むしろ現代のプリント柄よりもはるかに上質です。
ご家庭に、眠っている振袖があるなら、ぜひ確認をしていただきたいと思います。
成人式の着物で思い出すのは、女優の松たか子さんの振袖です。
成人式を迎え、レポーターに囲まれてインタビューを受けている姿が、20年以上経った今でも忘れられません。
当時の振袖は、華やかで色鮮やかな柄が主流でした。
ところが、松たか子さんがお召しになっていたのは、地味な鴬色の振袖でした。
しかし、その振袖は普通の振袖ではありませんでした。
江戸時代に作られた古代裂で、パッと見は分かりませんでしたが、全身に御所解文様が入っていました。
手描き友禅に、刺繍や絞りで柄を表現した、大変手の込んだ中振袖でした。
私は江戸時代の着物が残っているということに衝撃を受けました。
また、贅を尽くした着物というのは、こういうものなのだな、と感心したことを覚えています。
そして、着物や帯について、関心を持つようになったきっかけでもありました。